ひさしぶりに詩を書こうじゃまいか
2006年8月3日 かぞくとそれから「悪友」
セフレしか持てない悪友がさ。
酒を飲みながら言うねんて。
「ウチもダーリン欲しいわぁ」
あたしそれを鼻で笑うんよ。
あんたが欲しいのは、〈財布〉って書いて〈ダーリン〉て呼ぶ、そういう生き物やろ。
股開いてあんあんいってりゃすぐ終わる か。
それであんたは何が欲しいんか。金か。そう尋ねたら。
「好きな男なんて何一つおらんけど」とあんたは言う。
「誰かが強く抱きしめてくれてウチんこと撫でてくれるんなら。抱かれることくらいしてやるわ」
あたしはあんたの生き方が、人の愛し方が、ちょっぴりさみしいとは思うけど
さほどに絶望的やとは 思わんねん。
そう言うあんたが、さほどまちがっとるとは、思わんのよ。
結婚はしないとあんたは言う。
父親という生き物をもうつくりたくないとあんたは言う。
小学校の頃におとんに殴られて
おかんと一緒にこわい家から逃げたあんたは私の悪くて古い友達。
昔の「あいつ」の乗っていたのと同じ車種の車をみるたびに
胃の中のもん全部吐いてしまうあんたは
男を信じられんというのは
ほどなく順当やとあたしは思う。
でもねえ、あんた。 そんなセフレばっかつくって。子供できたらどうするんよ。
騒がしい飲み屋で酒の勢いでそう聞いたら。
避妊はしとるけど、という前置きのあとに。
「絶対産むわ」
とあんたは言う。
「子供ができたら絶対産む。その子はウチの子や。男になんてやらん。ウチがひとりで育てる」
水滴がにじむコップをしきりにおしぼりでぬぐいながら。
まるで素面みたいにあんたは言う。
「絶対ウチは産むわ。そんで、一生掛けてその子を愛するわ」
ねえ。
セフレしかもったことのない酒癖の悪い悪友よ。
あたしはあんたが
不幸やとはそんなに思わん。
勉強は何一つできんかったけど
金だけは大好きで、天才的に簿記が出来たあんた。
あんたは死ぬ気で金を稼ぎながら
いつか子供を抱く日を待っている
きっと 一生をかけて 心を傾けることができる そんな 何かを
腕に抱くために、あんたは今がむしゃらにやっている。
ハッピーエンドやと、いいと思う。
あんたは天国にはちょっといけるかわからんけど。
現世で、きっと、笑って死ねるといいと
あたしは思うよ。
セフレしか持てない悪友がさ。
酒を飲みながら言うねんて。
「ウチもダーリン欲しいわぁ」
あたしそれを鼻で笑うんよ。
あんたが欲しいのは、〈財布〉って書いて〈ダーリン〉て呼ぶ、そういう生き物やろ。
股開いてあんあんいってりゃすぐ終わる か。
それであんたは何が欲しいんか。金か。そう尋ねたら。
「好きな男なんて何一つおらんけど」とあんたは言う。
「誰かが強く抱きしめてくれてウチんこと撫でてくれるんなら。抱かれることくらいしてやるわ」
あたしはあんたの生き方が、人の愛し方が、ちょっぴりさみしいとは思うけど
さほどに絶望的やとは 思わんねん。
そう言うあんたが、さほどまちがっとるとは、思わんのよ。
結婚はしないとあんたは言う。
父親という生き物をもうつくりたくないとあんたは言う。
小学校の頃におとんに殴られて
おかんと一緒にこわい家から逃げたあんたは私の悪くて古い友達。
昔の「あいつ」の乗っていたのと同じ車種の車をみるたびに
胃の中のもん全部吐いてしまうあんたは
男を信じられんというのは
ほどなく順当やとあたしは思う。
でもねえ、あんた。 そんなセフレばっかつくって。子供できたらどうするんよ。
騒がしい飲み屋で酒の勢いでそう聞いたら。
避妊はしとるけど、という前置きのあとに。
「絶対産むわ」
とあんたは言う。
「子供ができたら絶対産む。その子はウチの子や。男になんてやらん。ウチがひとりで育てる」
水滴がにじむコップをしきりにおしぼりでぬぐいながら。
まるで素面みたいにあんたは言う。
「絶対ウチは産むわ。そんで、一生掛けてその子を愛するわ」
ねえ。
セフレしかもったことのない酒癖の悪い悪友よ。
あたしはあんたが
不幸やとはそんなに思わん。
勉強は何一つできんかったけど
金だけは大好きで、天才的に簿記が出来たあんた。
あんたは死ぬ気で金を稼ぎながら
いつか子供を抱く日を待っている
きっと 一生をかけて 心を傾けることができる そんな 何かを
腕に抱くために、あんたは今がむしゃらにやっている。
ハッピーエンドやと、いいと思う。
あんたは天国にはちょっといけるかわからんけど。
現世で、きっと、笑って死ねるといいと
あたしは思うよ。
朝っぱらから一人暮らししてる後輩がめそめそと「ムカデに刺されたんです親に言ったらすぐ病院行けっていわれて。どこいったらいいでしょうか」みたい電話で起こされる。
ちょっとまて折り返し電話するからと言っておかーさん土曜だから普通に病院やっとるよねムカデって内科でいいよねって言ったら
「なんであんたの友達とか後輩はいっつもそうやって問題おこすん!」
といわれる。いあいあいあいあ……(笑)だって……(笑)
まあ言いたくなる気持ちもわかる。これまで親に知り合い事(しかも警察事)で相談すること3件。その他法律関係だともう何件かわからない。
おかんその道の人やで、頼りにしちゃうわけだが、おかんにしてみりゃあんたの周りはいつもいつも……といった所(笑)
でもねでもねおかん
ほらこの子なんてね
朝一で一番に困ってあたしにいっちゃん先に電話かけてくるんし。
かわいいやん。
なんとかしてやらんなんやーって
おもうやん。
……おもわんよね(笑)てかわからんよね(笑)
まあそうよね。
生きるか死ぬかの境目になってぎりぎりに「どうしたらいいの」って電話もらうの、おかんも一緒やもんな(笑)
なんでかっつうとなあ
これはな
おかんに似てんわ(笑)
ちょっとまて折り返し電話するからと言っておかーさん土曜だから普通に病院やっとるよねムカデって内科でいいよねって言ったら
「なんであんたの友達とか後輩はいっつもそうやって問題おこすん!」
といわれる。いあいあいあいあ……(笑)だって……(笑)
まあ言いたくなる気持ちもわかる。これまで親に知り合い事(しかも警察事)で相談すること3件。その他法律関係だともう何件かわからない。
おかんその道の人やで、頼りにしちゃうわけだが、おかんにしてみりゃあんたの周りはいつもいつも……といった所(笑)
でもねでもねおかん
ほらこの子なんてね
朝一で一番に困ってあたしにいっちゃん先に電話かけてくるんし。
かわいいやん。
なんとかしてやらんなんやーって
おもうやん。
……おもわんよね(笑)てかわからんよね(笑)
まあそうよね。
生きるか死ぬかの境目になってぎりぎりに「どうしたらいいの」って電話もらうの、おかんも一緒やもんな(笑)
なんでかっつうとなあ
これはな
おかんに似てんわ(笑)
この身体を流れる血液の半分は
夢の中から受け継いだものだ
父が鬼籍に入ったのは
まだ私の記憶がモノクロだった頃
箸で掴んだ首の骨が
やけに白かったことだけを覚えている
理知的で聡明な母は
わたしの父をわたしのために再構築した。
つくりあげられたのは母の夫ではなく
また祖母の息子でもなかったが
まぎれもなく私の父だった。
絵本の読み聞かせをする代わりに
サンタクロースを語るように父の生き様を語り
虫歯菌の工事の様子がごとく父の仕事を語り
そうしてよくある小さな不幸のように
父の死を語った
本を読まない
漫画もサザエさんしか読んだことのない
テレビも見ない
嘘が何より嫌いだった 母の
それは一世一代の壮大なフィクション。
十六年の歳月の後
暴かれた秘密は やはり
嘘を親の敵のように憎んでいた 母の手の上にあった。
まことの父はそこにある。
しかし夢と何が違おう。
冷たい石の下に白い砂となって父の抜け殻は眠っている。
「声が聞こえる?」
十年ぶりの墓参りは そんな母の問いかけだった。
幽霊も魂も何一つ信じない母は横顔だけで静かに笑った。
「聞こえないでしょう。死んだ人は喋らないのよ」
そうして口を無くした死人の代わりに
夢物語を母は語ったのだ
現は夢。
夜の夢こそ真。
なれば。
瞼の裏に浮かぶ父は。
偽り事でもあたたかい腕をしている。
私の心は、夢の父によってつくられた。
今や全てを知っている。
嘘も。虚飾も。その痛みも。
けれどそれが何ほどのものか。
この身体を流れる血液の半分は
夢の中から受け継いだものだ
ねえ
おかあさん
おとうさんは
すてきなひとだったね。
夢の中から受け継いだものだ
父が鬼籍に入ったのは
まだ私の記憶がモノクロだった頃
箸で掴んだ首の骨が
やけに白かったことだけを覚えている
理知的で聡明な母は
わたしの父をわたしのために再構築した。
つくりあげられたのは母の夫ではなく
また祖母の息子でもなかったが
まぎれもなく私の父だった。
絵本の読み聞かせをする代わりに
サンタクロースを語るように父の生き様を語り
虫歯菌の工事の様子がごとく父の仕事を語り
そうしてよくある小さな不幸のように
父の死を語った
本を読まない
漫画もサザエさんしか読んだことのない
テレビも見ない
嘘が何より嫌いだった 母の
それは一世一代の壮大なフィクション。
十六年の歳月の後
暴かれた秘密は やはり
嘘を親の敵のように憎んでいた 母の手の上にあった。
まことの父はそこにある。
しかし夢と何が違おう。
冷たい石の下に白い砂となって父の抜け殻は眠っている。
「声が聞こえる?」
十年ぶりの墓参りは そんな母の問いかけだった。
幽霊も魂も何一つ信じない母は横顔だけで静かに笑った。
「聞こえないでしょう。死んだ人は喋らないのよ」
そうして口を無くした死人の代わりに
夢物語を母は語ったのだ
現は夢。
夜の夢こそ真。
なれば。
瞼の裏に浮かぶ父は。
偽り事でもあたたかい腕をしている。
私の心は、夢の父によってつくられた。
今や全てを知っている。
嘘も。虚飾も。その痛みも。
けれどそれが何ほどのものか。
この身体を流れる血液の半分は
夢の中から受け継いだものだ
ねえ
おかあさん
おとうさんは
すてきなひとだったね。
母が職場に辞表を提出したという。(ほんとうにそういう行動をしたわけではないけれど、実質的に)
それを聞いたわたしを含む子供達の反応はといえば。
あぁ、やっとか……
というものだった。
うちは昔から母子家庭で、
まあ諸事情から表に出る表札の名前が変わり血の繋がらない誰かと住むようになっても、母子家庭であるということは変わらなかった。
父はいない。
ずいぶん昔に死んでしまって、それっきりだ。
別にそれが不幸だとはひとつも思ったことはなかったし、苦労は母親しかしたことがない。
私達はあまりに何一つ不自由をせず大学まで行かせてもらった。
そろそろ母は休んでもいいと思う。
そろそろ母は、休んでもいいころだろう。
父親が死んでもう十三回忌も済ませた。
これまで、あんまりに一人で頑張りすぎだったと、思う。
私達はまだ学生で収入が無い。けれどあと一年、二年経てば。
早く仕事をやめればいいのにと思っていた。
毎日山程の薬を飲んで、半分聞こえない耳であんなに神経の使う仕事を毎日するくらいなら。
本当に、本当に。
ひとつやふたつバイトをすることなんて全然苦ではないのだ。
馬鹿学生ばかりやってる兄妹は。
やっと母が仕事をやめてくれるんだなと、安心する。
それを聞いたわたしを含む子供達の反応はといえば。
あぁ、やっとか……
というものだった。
うちは昔から母子家庭で、
まあ諸事情から表に出る表札の名前が変わり血の繋がらない誰かと住むようになっても、母子家庭であるということは変わらなかった。
父はいない。
ずいぶん昔に死んでしまって、それっきりだ。
別にそれが不幸だとはひとつも思ったことはなかったし、苦労は母親しかしたことがない。
私達はあまりに何一つ不自由をせず大学まで行かせてもらった。
そろそろ母は休んでもいいと思う。
そろそろ母は、休んでもいいころだろう。
父親が死んでもう十三回忌も済ませた。
これまで、あんまりに一人で頑張りすぎだったと、思う。
私達はまだ学生で収入が無い。けれどあと一年、二年経てば。
早く仕事をやめればいいのにと思っていた。
毎日山程の薬を飲んで、半分聞こえない耳であんなに神経の使う仕事を毎日するくらいなら。
本当に、本当に。
ひとつやふたつバイトをすることなんて全然苦ではないのだ。
馬鹿学生ばかりやってる兄妹は。
やっと母が仕事をやめてくれるんだなと、安心する。