たけだくんのはなしをしよう!
 たけだくんはあたしのおともだち。
 おともだちちがった。あたしのしりあい。あたしのしっているおとこのこ。
 小学校でであった、あたしたち。
 であったなんてきはずかしいわ。
 ただのくらすめいと。ただのどうきゅうせい。

 たけだくんて
 まじきもい。

 どういうところがきもいかっていうとねー
 ぜんたいてきに。

 じゅぎょうちゅうにね、つくえのうえにつっぷしてるっしょ。
 せんせいに「たけだどうした」っていわれるっしょ。
 たけだくんこたえるわけよ。
「生理痛です」

 マ ジ ム カ ツ ク !!!!!!!!!!!!!

 おま!
 せいりつうのいたみを!
 知ってからいえそういうことは!!!!!!!

 たけだくんもう、じょしからそうすかんよ。
 まじきらわれたわよ。
 でも、もとからそんなすかれるタイプではなかったんね。
 すかれるタイプではなかったんけど
 たけだくん
 勉強ができた
 たけだくん
 サッカーもできた
 ぶっさけ小学校でこのふたつクリアしてりゃ
 しょうじき顔なんて
 どうでもいいっすよ(まあそれでもげんどがあるがね!)

 たけだくん中学校でいっちょまえにかのじょつくっておったわ。
 なかせておったわ。おんなのてきめ。

 あたしとたけだくんのかんけいはー。
 うんとびみょう。
 きらいじゃなかったけど。
 きにくわないやつではあったね。
 きにくわないやつではあったけど。
 きらいじゃなかったね。

 そんでたけだくんは、県でいちばんの高校いったわさ。
 あいつばかね、高校入試に肺炎おこして
 でもこんじょうで受けにいって
 かえってそのまま入院さ。
 でも、やっぱこんじょうはこんじょうやね。
 うかったわ。
 あいつ、かっこういいなって、あたしそんとき、はじめておもてん。

 それから年月はたつわけっすよ。
 もう10ねんとはいわんが、5ねんはたったね。
 ハタチの同窓会よ
 成人式ってやつよ。
 たけだくんあらわれるっすよ。

 いやあ

 いいおとこになっちゃってまあ。

 あきれますわなあたくし。
 まあ、あたまのいいおとこがあたまのいい高校いって、それでもちょっと失敗したようだけど、金のかかる医科大学いってだな。
 年月とともにやさしさだってもちあわせて。
 あーあー。
 いいおとこになったねあんた。
 よかったわ。
 あえて。

 成人式の二次会で、飲み会で、あたし酒が好きだから隅っこに座ってさ。
 ぼんやり周りの騒ぎを眺めていたのさ。
「どしたの」
 そういってあたしの目の前に座ったねたけだくん。ばかめ。サシ飲みみたいになってやんの。
 がんばってるみたいやんね。彼女もおるっしょ。
 曖昧にたけだくんは笑ったさ。それね、YESさね。
 いいんよ。安心した。男が優しくなるのは、見てて嬉しいもんね。
「聞いたよ、小説書いてるんだって?」
 そんなん言うなや。恥ずかしいやろ。
 高校ん時の話さ。もう何年も前さ。賞もらったっていってもね、名誉だけよ。本出させてもらえない賞に、何の価値があるってのよ。
「でもまだ書いてるの?」
 そりゃね。
 ずっと書いてますよ。
「へえ」
 たけだくん笑ったのさー。
「本でたら、買ってやるよ」
 なんてそんな、格好良いこと言うわけ。
 ばかめ!!!!!!!!!!!!!!!!!
 あたしちょっと照れちゃったのさ。格好良いこと言ってかえさなきゃって思ったのさ。
「本出たら送りつけてやるよ!!」
 そう言ったさ。ただの、売り言葉に買い言葉だけどね。

 たけだくんわらったね。
 信じたのか、信じなかったのか、は、わからないけどさ。


 ねえ、たけだくん。
 今、あたしは、
 作家になっています。
 あれだけ願った、作家業に、どうにか、足を踏み入れています。
 出版社のある、東京のとある駅に降りるたび
 すぐそばに、ほんとうに運命みたいにすぐそばに、
 あなたの通う、医科大が見えます。
 あなたはまだ、あたしの言葉を覚えているでしょうか。
 飲み会の席の、あんな勢いだけの、言葉を。
 あたし、貴方に、本を贈りたいです。
 あなた、あたしの本を見て。
「マジかよ」
 なんて。
 笑ってくれるかしら。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索