久々に詩ですよん。

2006年10月30日
『恋敵と書いてライバルと読むのです』

 あたし今恋をしている。
 あたし今にっくき恋敵が居る。

 あたしの好きな人、綺麗な目をして砂まみれになる。ズボンの後ろで手を拭く癖がある。職業病。
 グラウンドかけまわる。かけ声が意味不明。日本語ですらない!
 あたしの好きな人のことが好きな女、クラスメイトの髪の長い美人。
「あれってさぁ守ってこー、って言ってるんだよ。知ってた?」
 知らないよ。ていうか聞こえないよ!
 そういうこと訳知り顔で言う女。ほんと死んで欲しい。
 でも恋敵にはならない。
 敵わない。絶対。

 あたしの好きな人。
 右肩持ち上げてほっぺたの汗拭う。
 青いハンカチなんて持ってない。でもあたしの王子様。
 つばのある帽子触ってサイン出す。
 でもあたしなんにもわからん!
 レフトってなんだ!
 ライトってなんだ!!
 右と左だ! それってどっちから見てだ!
 ファウルって何だ! 2回目までストライクだったのに三回目で突然ボールになった! どうしてだ!!
 絶対ルールなんか覚えん、絶対楽しいなんて思えん!!

 あたしの好きな人が主将やり出してから
 あたしの周りの女は 野球好きが多くなった。
 あたしは絶対そんなんにならん。
 あたしは絶対そんなんにならん。
 あんたらみんな女失格や。
 あそこにおるのは にっくき恋敵やよ。

 熱い砂漠に立ち上り
 一夏の間に幾億もの青春男子を喰らい尽くす
 それはそれは美しい女神ねんぞ

 惚れたらいかん。
 絶対に。好きになんかなれん。

 満員の歓声も、ブラスバンドの煩いラッパも、応援団のかけ声もチアリーダーのポンポンもその辺でビール飲んでる選手のお父さんも大嫌いだ!! マウンドの上でたった一人で立つあの人をそれでも一番美しいと思ってしまう自分なんて大嫌いだ!!
 あと一球。
 あと一球。まだ続く。夏よ、まだ続くのか。
 

(高く打ち上がる、音)

 ああ、あの人の。あの人の夏が終わる。
 夏の女神に盛大に振られたあの人は。
 きっと今宵、彼女のために泣くだろう。

 あたし今恋をしている。
 あたし今にっくき恋敵が居る。
 心奪って喰らい尽くして、そうして気まぐれに少年を捨てられる女神なんかに。
 神様あたしは、勝ち目があるのでしょうか。

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