母が職場に辞表を提出したという。(ほんとうにそういう行動をしたわけではないけれど、実質的に)
それを聞いたわたしを含む子供達の反応はといえば。

あぁ、やっとか……

というものだった。

うちは昔から母子家庭で、
まあ諸事情から表に出る表札の名前が変わり血の繋がらない誰かと住むようになっても、母子家庭であるということは変わらなかった。
父はいない。
ずいぶん昔に死んでしまって、それっきりだ。

別にそれが不幸だとはひとつも思ったことはなかったし、苦労は母親しかしたことがない。
私達はあまりに何一つ不自由をせず大学まで行かせてもらった。

そろそろ母は休んでもいいと思う。

そろそろ母は、休んでもいいころだろう。

父親が死んでもう十三回忌も済ませた。
これまで、あんまりに一人で頑張りすぎだったと、思う。

私達はまだ学生で収入が無い。けれどあと一年、二年経てば。

早く仕事をやめればいいのにと思っていた。
毎日山程の薬を飲んで、半分聞こえない耳であんなに神経の使う仕事を毎日するくらいなら。
本当に、本当に。
ひとつやふたつバイトをすることなんて全然苦ではないのだ。
馬鹿学生ばかりやってる兄妹は。

やっと母が仕事をやめてくれるんだなと、安心する。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索